2010年12月09日

「みちのくの古布の世界」

本のご紹介。

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図説 みちのくの古布の世界 (ふくろうの本/日本の文化)

青森県出身の民俗学者であり、以前にご紹介したアミューズミュージアムの名誉館長でもある田中忠三郎氏が蒐集した東北地方の衣服コレクションの本です。

「刺す」「染める」「編む」「継ぐ」「織る」と五つの項目に分けられており、それぞれの成り立ちや歴史を多数のカラー写真と共に紹介しています。

今回は特に、菱刺しの前掛けの配色の美しさに感嘆してしまいました!
なんという豊かで鋭い感性なのでしょう。カラフルな色毛糸を目にした南部地方の娘さん達の喜びと、刺す楽しみに溢れていた様子が感じられます。

それと、「継ぐ」の章のボロと裂織には圧倒されました。
幾重にも継ぎ足された衣類や寝具からは、小さな布切れさえ大切に扱った布への想いがひしひしと伝わってきます。ひいては、北国の厳しい自然の中で、「生きる」ことへの知恵と執着から生まれたものであることが分かります。

全体を通じて、文章の端々に著者の当時の人々に対する尊敬の念と深い愛情を感じました。
ページを開くたびに、非常に刺激を受ける本です。

2010年01月20日

こぎん刺しの展示会

先日のコメント欄で、ある方がこぎん刺しの展示会の情報を教えて下さいました。
もう開催されてからしばらく経っているのですが、私のように、「そんな情報全然知らなかった!」という方もいらっしゃるかもしれないので、ここでご紹介させていただきます。


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浅草「アミューズ・ミュージアム」オープニング企画展
『布を愛した人たちのものがたり展』
2009年11月1日〜2010年2月28日 10時〜18時
会期中無休
入場料 1000円
詳細は公式サイトで。


浅草にこのようなミュージアムがオープンしたんですね。
その記念すべき最初の展覧会に、なんと「こぎん」を持ってくるとは!今後も大いに期待ができそうです。
こぎん刺しのことを、ここでは「津軽刺し子着物」と表現していますね。
なるほど、確かにその方が内容が伝わり易く、より多くの人にこぎんを知ってもらう好機になりそうですね。
今回は国の重要有形民俗文化財として指定を受けているものの中から、世界初公開の約100点を順次、所有者の田中忠三郎氏自身が選りすぐり展示をしていくのだそうです。

うーん、これは是非とも観に行きたい!
これを機に、真剣に里帰りを検討中ですわーい(嬉しい顔)

2009年05月29日

朗報!?

ほぼ1年ぶりの帰国。
今回は試しにあるものを荷物に忍ばせていきました。
それさえあれば、空港での長い待ち時間もなんのその、私にとっては最も嬉しい携帯品のひとつです。

そう、今回は針と糸と鋏を持ち込んでみました。針は1本だけを小さい針山に刺して、鋏は携帯用の小さくて先が少し丸まっているもの。
結果としては、アメリカでもカナダでも、全く問題なしでした。

待合イスでチクチク、飛行機の中でもチクチク。
小物用の小さな布に刺し始め、時間つぶしのつもりが結局最後まで刺し終えてしまいましたわーい(嬉しい顔)

何処でも手軽に縫えることも、刺し子のよいところですね。
おかげで長い飛行時間も、今回は比較的短く感じました。

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2008年11月13日

キルターから見た刺し子

本日は、海外で出版されている刺し子の本のご紹介。

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The Ultimate Sashiko Sourcebook

山形県の庄内地方で刺し子を学び、現在はイギリスで刺し子を教えている英国人キルターの著作です。

本を開くと、材料の説明や基本的な技術、各種ステッチの図解、100種類以上にわたる模様の刺し方(各模様の意味・刺す順番の説明付き)、各種紋の説明、十数ページにわたる一目刺しの説明などなど・・・・・カラー写真を使いながら、これ以上細かく説明できない!という位にとても丁寧に解説されています。

前書きの中に「刺し子に対する理解の一助となることを願う。」と書いてありますが、この著者の方は、刺し子発展の背景や歴史、江戸・明治時代の地方の庶民の暮らし等にも多くのページを割いていて、とても真摯な姿勢で刺し子と向かい合われていることに感銘を受けました。
当時、商船として日本沿岸諸港に反物や衣類を含む多くの日用生活品を運んでいた『北前船』についてルートマップまで載せて説明しているところなども、なかなかマニアックで好感が持てますわーい(嬉しい顔)

非常に内容の濃い良本なので、刺し子を始めたい!という海外の刺し子ビギナーの方にはもちろん、日本で刺し子をしていらっしゃる方にも、自信をもっておすすめできる1冊です♪

2008年02月05日

縫い始めと縫い終わりはどうする?

講習をするといつもこの質問が出るので、一度まとめておこうと思います。


縫い始めは、三目ほど縫い目とちょうど重なるように返し刺しをします。

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糸を途中でつなぎたいときも、同じように三目ほど重ね刺しにします。

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裏地を付ける場合は大丈夫ですが、暖簾や布巾など裏側も見える単のものを縫うときは、糸端の処理に気をつけます。
糸端は長めに残しておいて、一度水洗いをして乾かしたのち、布の際で切ると具合良く仕上がります。


上の写真2枚はいずれもてれこタペストリーを作ったときのものです。
このタペストリーは空間の間仕切りとして使うため表裏同じに見えるようにしたかったので、糸端の処理に加えて渡し糸(線と線との距離が近い場合に糸を渡してそのまま連続して縫うこと)もしないように気を配りました。

糸を渡して縫う場合と比べるとおそらく倍以上の時間がかかりますが、ずっと使うことを考えると、「ここは頑張ってきれいに処理をしておこう手(グー)」という気になります。

てれこタペストリー(下写真)の水平線方向にある横のラインはすべて渡し糸をしないで作りました。
正直なところ、この作業はとっても大変でした〜ふらふら


tapestry (detail) edit.jpg  tapestry (2).jpg

2007年09月17日

はたらき着に咲いた華

ずっと欲しかった本をやっと入手できました。

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津軽こぎんと刺し子―はたらき着は美しい (INAX BOOKLET)


主に津軽こぎんに焦点を当てながら、北は津軽、南は博多まで日本各地の刺し子を紹介している他、海外の刺し子についても少し触れられています。

それぞれの地域の環境・歴史背景・その用途によって、同じ刺し子でも図柄や配置が違っているのが面白いです。

興味深いエピソードとしては、津軽こぎんに似た中国の纏足の靴の刺繍をするときに、模様の歌を歌いながら刺していくというものがありました。

「はじめに花一つ、つぎには三つ・・・・・・といったように、刺し方が歌になっている。それぞれの模様ごとに歌があって、歌いながら刺していったらしいのです。」(12頁より)

素敵ですねぇかわいい


本の中では「木綿以前の衣文化」についても詳しく書かれています。

家族が着るための衣服を調達するのは当時の女性の重要な仕事のひとつで、植物の栽培〜機織り〜刺し子までの全てを、畑や家事労働の仕事の合間にしなければなりませんでした。

その緻密さで有名なこぎん刺しでさえ、経験者の方によると、
「刺すだけの手間は一枚のこぎんを作るのに費やす全体の手間の、十分の一にも達しない」(70頁より)と言われるほど。

「衣服の布を得るには、計り知れない大きな労働力を必要とした。」(79頁より)

きっと私なんかの想像を絶する、たいへんに骨の折れる作業だったのだと思います。布は大切にしなければ・・・とまたしても再確認しました。


それと本のデザインについて言えば、思わず唸ってしまったのがそのレイアウト。文章や写真のレイアウトが刺し子やこぎんの図柄を想像させる構成になっているんです!
刺繍と同様、細かいところまで気を配ってあります。

こぎんや刺し子について知る資料として、とても参考になる本でした。

2007年03月09日

刺し子の魅力再確認

先日、注文していた刺し子の本が届きました。



鈴木満子さんの出身地である東北の庄内地方で刺されていた
「米澤刺し子」を、古い野良着を中心に紹介している本です。


内容をあまり知らずに注文したのですが、本を開いた途端、不覚にも涙があふれてきて止まらなくなりました。

家具や小物を使うなどの演出は一切なく、着物とその詳細の写真のみが載せられているのですが、それがかえって着物の模様や刺し子の縫い目を引き立たせていて、それらを縫った女性達の姿や気持ちを想像せずにはいられませんでした。

貧しい生活の中で、家族のために一針一針心を込めて作り上げた着物。当時は、印を付けずに織目を追って縫っていたそうです。もちろんその頃は電気もありません。どうやってそのようなこまやかで繊細な模様を生み出し、縫い上げていたのでしょうか・・・・・・。当時の質素で勤勉な生活の様子が伝わってきます。


以前に日記でシェイカー教徒について書いたことがありますが、この米澤刺し子のコレクションを見て、再び彼らの言葉を思い出しました。

「祈るのにひざまずく必要はありません・・・・・・あなたが誠実に仕事をすることが、そのまま祈りなのです。」(教団が生んだ名コックの言葉)

「手は仕事に、心は神に。」(創始者マザー・アン・リーの言葉)

信仰こそ違いますが、その行為や心境においてはどこか共通するものがあるように思いました。


必要だから作る、誰かのために作る、という手仕事の原点に立ち戻らせてくれる本です。


参考サイト

鈴木満子(古布母家) http://www.kofu-omoya.com/

2007年03月02日

補強の仕方

仕立てまで全て手縫いで行う場合、やはり強度の心配があります。例えば手提げの持ち手やマチなど、力の加わる部分には充分な強度が必要です。


そこで登場するのが「返し縫い」

縫い方はシンプルで、縫い目を半分、あるいは全部返して(戻して)縫います。見た目には、表側は普通の縫い目に見え、裏側は糸が重なるようになります。

一回一回針を抜くので、ぐし縫い(並縫い)に比べて多少時間はかかりますが、この縫い方をするだけで強度は何倍にもなります。

力が加わる部分の他にも、縫い始めと縫い終わり、幾重にも重なる部分などには返し縫いをしておくと安心です。


私はこの返し縫いですべてのバッグ類に対応しています。
結構重いものも入れていますが問題ないようですわーい(嬉しい顔)


2007年01月24日

製作の手順

こんな感じで進めています。

1.作るものを決める

私の場合、必要にせまられて作ることが多いです。
“こういうのがあったらいいなぁ”から始まります。

2.図案を決める

刺し子の本などを参考に、作りたいもののイメージに合う図案を
選びます。

3.布地を決める

目的に合わせた布を選びます。
例えば、よく洗うものには厚手の木綿、装飾的な小物には絹、
伝統的な雰囲気を出したい場合は藍木綿・・・など。
裏布もこのときに選びます。表布とのバランスを考えながら、大抵薄地のものを使います。

4.糸を決める

threads.jpg糸の色と太さを決めます。

刺し子糸:素朴で力強い感じを出したいとき等。
刺繍糸:色が豊富なので、微妙な色合いが楽しめます。

作品の大きさに合わせて太さ(何本どりにするか)を決めます。


すでに持っている糸で合う色がないときは買いに行きます。はぎれを片手に糸売り場にしゃがみ込み、じっくりと色を選んでいくのは、私にとって至福の時ですわーい(嬉しい顔)    

5.デザイン・サイズを決める

用途に合わせて、デザインと具体的なサイズを決めます。
刺し子を施すと必ずと言っていい程縫い縮みが発生するので、
多少余裕を持たせます。

6.図面を描く

plan sketch.jpg私は実際に作り始める前に、詳細な図面(縮小図)を描くようにしています。

多少時間を要しますが、大きい作品・複雑な模様・細かい付属品を付ける場合など、縫いながら確認できるので描いておくととても便利です。
同時に、使った糸番号なども今後のために記しておきます。

写真は浅葱木綿の鍋つかみを作ったときに書いた図面です。

7.図案を写す

図案を写すのは最も骨が折れる作業ですが、仕上がりに影響するので丁寧に写します。大抵はチャコペーパーを使って写していますが、直接布地に書くときもあります。

shituke mihon.jpg大きい作品、複雑な模様などはしつけ糸を使うと便利です。

左写真の作品はたいへん大きい物だったので、しつけ糸でマークをした後に直接チャコペンで書いていきました。


8.ひたすらに縫う

説明はいりませんね。
準備段階も楽しいですが、やはり縫う作業には及びません。
布や糸に触れながら、何も考えずに縫っていく作業は本当に気持ちがいいです。
タグ:刺し子

2007年01月11日

並幅が使い易い

tanmono roll.jpg

並幅とは、和服地の反物の幅のことで通常はおよそ36p。

並幅は小物や手提げを作るのには丁度良いサイズで、耳の部分もうまく活用できます。特に暖簾を作るときなどは脇の処理をしなくても済むので手間が省け、見た目にもすっきりと仕上がります。

なので私は、濃紺の藍木綿や浅葱木綿などの定番のものは思いきって反物で買うようにしています。(一反の長さは、木綿反でおよそ12m)
ただでさえ高価な藍木綿を一反買うとなると多少勇気が要りますが、切り売りよりは断然割安ですし、何よりも、手元に置いておく事で作りたいときに一気に取り掛かれるのでそうしています。

新しい反物を買う他にも、いい方法があります。
古い着物をはいで使うのです。蚤の市などで買える安い着物なら
気兼ねなく使うことが出来ますし、色や柄も地味なものから派手なものまで色々と手に入ります。


蛇足かもしれませんが、着物をはいでいくと全て四角い布になり、それらを繋げていくと、再び一反の長さになります。

初めてそれを知ったときは、新鮮な驚きがありました。
つまり、最低限必要な部分しか切っていないのです。もちろん着る人の寸法に合わせて作ってあるのですが、並幅で余った部分は全て縫い代の中に入れてしまいます。そうする事によって、寸法を変えて縫い直すことが可能になります。

これこそは、和服と洋服の作り方において大きく異なる所です。
服を作る、布地を再利用するという過程において、和服は実に無駄のない合理的な仕立て方なのです。

着物ってすごいなぁわーい(嬉しい顔)

2006年12月20日

手縫いがいい

実は、私はミシンがうまく使えません。
大抵縫い初めと縫い終わりが綺麗にいかなかったり、布が微妙によれてしまったりして、何度もやり直しているうちに布目が開いて汚くなっていき、結局は手で縫うはめになります。

てれこタペストリーを作ったときもそうでした。
縫い合わせる部分が長かったので(縦230p)懲りずにミシンを使ってみたのですが、刺し子の模様がきれいに合わないのがどうしても気になってしまい、結局30分もかけてミシンの糸を取り除きました。
最初から手で縫っていれば今頃もう出来ていたのに・・・・・・、と悔やみながらもうやだ〜(悲しい顔)

何度もやり直したりしていると、時間ももちろんですが、私の場合貧乏性なのか「糸がもったいない!」と思ってしまいます。

手縫いの良いところに、糸を無駄なく使えるところもあると思います。針に通した糸は最後まで使うことができるので気分がいい。そしてバランスを考えながら丁寧に縫い進めて行くことができます。特に、刺し子を施した後で他の布と繋げて模様のラインを合わせる場合などは、微調整のきく手縫いの方が断然綺麗に仕上がります。

ちくちくと手先を動かすことによって気持ちが落ち着くし、そのゆっくりとした静かな時間も心地よい。
私には手縫いが合っているみたいですわーい(嬉しい顔)